日本経済新聞 2008年9月12日付記事

菅原研究所

「五年、十年先のシーズ(種)を蓄えたい」。精密測定器の開発・製造などを手がける菅原研究所(川崎市)の菅原重信社長は中長期をにらんだ地盤固めに力を入れ始めた。菅原氏が社長に就任して十月で十周年を迎える。これからは父親で創業者の重二氏が築いた基礎技術の「応用分野をさらに広げる時期」と位置づける。「二代目」としての目標は明確だ。昨秋、技術開発体制を刷新、開発会議に社長が自ら出席するようにして、興味深いアイデアを拾い上げている。「将来の売り上げにつながる新しい技術の種を探し当てる」(菅原社長)のが狙い。会議の進行を技術者らに任せると、知識が豊富すぎて「難しい」という言葉が先に出てしまうことを心配する。ストロボスコープ、ベアリング検査機器、モーター性能測定器が事業の三本柱。製造・開発などに欠かせない検査装置の品ぞろえの多さで顧客の信頼を得てきた。主力のストロボスコープは、回転や移動中の物体に閃光(せんこう)を当てる装置。物体が一瞬静止して見える原理を応用し、さまざまな検査機器に組み込まれている。光源の「キセノンフラッシュランプ」を自社開発できる点も強みだ。菅原社長は「技術力の裏付け」として、保有特許の件数を改めて重視する。二〇〇〇年までに十三件の特許、二件の実用新案を登録したが、その後は申請に消極的だった点を反省。「今後は一年に一、二件の特許申請をしたい」と話す。〇七年九月期の売上高は九億七千五百万円。ストロボスコープが四十二%を占め、ベアリング検査機器とモーター性能測定器がそれぞれ二割程度を占めている。〇八年九月期は九億五千万円程度の売り上げを見込むが、ここ数年の年商は九億円前後にとどまっている。今後はストロボ応用製品の開発を加速し、収益の拡大に弾みを付けたい考えだ。「工業用ヒーター」や医療分野の「眼底検査器」など研究領域が広がってきたという。サービス範囲も拡大。例えば、モーター性能の測定では、製品販売だけでなく顧客からの測定依頼にも有償で応じている。高額な装置は購入できないが、「測定データがほしい」という顧客の声に応える。規模は小さいながら、売り上げにも徐々に寄与し始めた。中国・上海で九月下旬に開かれるベアリング関連の展示会にも出展。中国メーカーなども参加するとみられ、新製品のPRや販売を通じて新規顧客の獲得を目指す。人材難のなか、中途採用と退職者の再雇用で技術力を維持してきた。借入金を圧縮するなど財務内容も改善してきたが、取引先の廃業などで部材調達に手間取るケースもある。景気の変調で「企業間の分業のネットワークが崩れかけているのではないか」と菅原社長は憂慮する。資材の仕入れ量を増やさざるを得ず、「在庫圧縮が進まない」のが悩みの種だという。

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